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エンドリケリー

エンドリケリーは、そのいかにも生きた化石といった雰囲気で人気の高い熱帯魚ですが、いかつい容姿とは裏腹に、良く慣れ、愛嬌たっぷりの、とても可愛い熱帯魚です。

うちのエンドリケリー、やってきたときは数センチしかないヒョロヒョロのチビッ子でしたが、みるみる大きくなり、ちょっぴりですがエンドリケリーらしい貫禄もかいま見えるようになってきました。今ではすっかりなついて、エサの時間になるとソワソワしながらこちらにすり寄ってきます。

エンドリケリーの写真

エンドリケリーはアフリカの川や湖に生息するポリプテルスという古代魚の仲間で、エンドリケリーを表記する場合には学名である「ポリプテルス・エンドリケリー」とするのが一般的です。ポリプテルスは古生代に栄えた原始魚類の形質を今に受け継ぐ生きた化石と呼べるような熱帯魚であり、古くから小型の種類を中心にアクアリスト(熱帯魚の飼育を趣味としている人たち)の間で人気の高い熱帯魚でした。そのころからエンドリケリーのような大型ポリプテルスが存在することは日本でも知られていましたが、当時は水族館でも見ることのできない憧れの熱帯魚たちだったのです。

見れば見るほど不思議で魅力的なエンドリケリーとその仲間たち。水から顔を出して息を吸い込み、そのウロコはパラエオニスクスという原始魚類と同じ四角い形、鼻先には短いヒゲのような鼻管をたくわえ、背びれは一本づつに別れていて一本ごとに立てたり倒したりもできます。そして中でもその腕のような胸びれは器用で、ときどき体を掻いたりもするのです。

エンドリケリーの顔は大型ポリプテルスの中でも特に迫力があります。体はでっぷりと大きいのに頭だけが平らで、どこかアンコウを思わせる大きな口、上に突き出すようについた大きな目、太く不規則な縞模様、そしてステゴサウルスのようなたくさんのヒレ……。はじめてエンドリケリーのイラストを見たとき、世界にはこんな熱帯魚がいるのかと衝撃を受けたものです。

月日は流れ、エンドリケリーの養殖が盛んになり、すっかりエンドリケリーがアクアリストの間でお馴染みになった頃、ふと立ち寄った熱帯魚ショップで憧れのエンドリケリーの幼魚が特売されていました。しかもかなりのビックリ価格で。かくして少年時代からの夢だったエンドリケリーの飼育が現実のものとなったのです。エンドリケリーのいかにも生きた化石といった雰囲気は、まるで古代の世界にタイムスリップしたような気分にさせてくれます。

エンドリケリーには、ポリプテルス・エンドリケリー・エンドリケリーの他に、魅力的なもうひとつの亜種がいます。それがポリプテルス・エンドリケリー・コンギクスと呼ばれる亜種です。まだエンドリケリー・エンドリケリーが養殖されていなかったころ、エンドリケリー・コンギクスはビチャー(ビキール)という種類と間違われて輸入されたことがあって、その成長した姿を見たことがありましたが、それはもう、ぜひ水族館で飼育して欲しいと思うほどの凄まじい迫力を放つカッコ良さでした。

コンギクスの写真
エンドリケリー・コンギクス
ポリプテルスの幼魚には、アホロートルなど両生類の幼生にあるような外鰓(がいさい:エラの後ろの突起物)があります。

エンドリケリーの写真
エンドリケリー・エンドリケリー
こちらは小さかった頃のエンドリケリー。

ところで古生代の生物にとても興味を持っている私にとって、ポリプテルスの起源についても実に興味のあるところです。古生代の硬骨魚類のうち、腕のような胸びれを持つものはシーラカンサス類の他にも何系統かが存在していました。原始魚類の代表的なグループであるパラエオニスクス類の中にもケイロレピスやラウニアなどの淡水魚が腕状の胸びれを持っていて、これらの化石を見るにつけ、ポリプテルスがこうした時代を生きていた頃の様子を思い浮かべてしまいます。彼らが主に浅い河川に生息していたことを考えると、障害物の中を「歩き」まわるのには、腕のような胸びれはきっと役立ったことでしょう。いずれにしても太古のロマンをかきたててくれる胸びれです。少なくともこうした腕のような胸びれを持つ原始魚類のうちのどれかが、ユーステノプテロン、そして、両生類イクチオステガへと進化を遂げたのですから。

さてさて、ようやく夢がかなったエンドリケリーの飼育、まさにイメージ通りのカッコ良さ!のはずが、なぜかうちのエンドリケリーは成長するほどに可愛らしくなっていきます。今ではすっかり養殖が盛んなエンドリケリー、しかも特売でしたし、もしかしたらうちのエンドリケリーは、おとなしい小型ポリプテルスの形質を持っているのかな、なんて思ったり。いずれにしてもエンドリケリーは素晴らしい!という気持ちにかわりはありません。だんだん魚を飼っている気がしなくなってくる、エンドリケリーはそんな不思議な生き物です。

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ポリプテルス・エンドリケリー

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