ベルーガは北半球の寒い海に暮らす、神秘的な姿をした美しい海獣です。声や容姿のイメージから白いイルカとして知られていますが、実はベルーガはクジラに近い動物なのです。沿岸近くに住むことから人の目にもつきやすく、時には河にも現われます。ちなみにベルーガは英名で、ロシア語の「bielo(白)」に由来し、日本ではシロイルカとも呼ばれています。新鮮なイカやカニが大好きです。
生まれたばかりのベルーガは茶色味を帯びた暗灰色ですが成長すると美しい白色になります。ベルーガは、その愛くるしい姿と人なつこい仕草で水族館でも絶大な人気を博していますが、頭と胴の区別がつきにくいクジラ目の中にあって、ベルーガは頭と胴がはっきり分かれている上に頭が自由に動くので、頭を縦に振って、うなづいたりすることもでき、このことがベルーガをよりいっそう魅力的にしています。
分類学上は長い角(左の歯)で知られるイッカクと同じ仲間です。シャチなどのように世界中を行き交う海獣は別にして、寒い海に住む海獣には背びれのないものが多くいますが、ベルーガも背中にわずかな出っ張りがあるに過ぎません。大きさは4~5メートルくらいになりますが、オスの方がやや大きく、中には更に大きく成長するベルーガもいるようです。寒さに耐えるため、体には15センチもの厚い脂肪の層があり、体重比の体脂肪率は実に50パーセント以上にも及びます。また、ベルーガの歯はそれほど強力ではないのでエサは吸い込むようにして飲み込みます。寿命は50年くらいと言われています。産まれたばかりのベルーガの大きさは約1.5メートル、そして子どものベルーガは親と声でコミュニケーションをとります。ベルーガは実に様々な声を出すことができるので、北極海を行き交う船員たちは極北の海の中から船底を通して響いてくるその美しい声を聴いて、ベルーガを海のカナリアと呼んでいました。
神秘的な姿と優しい眼差し、そして穏やかな表情は、慌ただしい毎日にひとときののどかな時間を過ごさせてくれます。存在するだけでファンタジックな世界が広がる奇跡の美獣ベルーガ。遙かなる極寒の海に、彼らの暮らせる世界がいつまでも続くことを願って。(S.HONDA)
データ | |
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学名 | Delphinapterus Leucas |
分類 | クジラ目 ハクジラ亜目 イッカク科 |
全長 | 5.5メートル |
体重 | 1.5トン |
分布 | 北極圏に分布 |