動物進化の物語

動物の進化

どうぶつ戦国武神伝

地球を支配していたのはタコとエビだった?いま解き明かされる、動物たちの進化の歴史。



どうぶつ戦国武神伝

シルル紀の三葉虫

※この物語は進化の歴史を極端に誇張し脚色したフィクションです。

【古生代の章】


長い長い先カンブリア時代が終わり、
古代の地球はついに古生代のカンブリア紀を迎えた。
海の中は数多くの生き物たちの誕生とともに少しづつにぎやかになり、
それぞれが天下統一を目指していた時代。
武者たちは大いなる野望を胸に秘め、
ただひたすら自らの出番の時をじっと待つ。

そしてカンブリア紀も終わりに近づく頃、
合戦の準備を終えた各チームの大名たちが更なる地を求め、
いよいよ侍どもを率いて進撃を開始した。
かくして数億年にも及ぶ乱世の幕が、ついに切っておとされたのである。

そんな中、急速に領地を拡大していった二つのチームがあった。
節足動物さんチーム(エビの仲間)と
軟体動物さんチーム(貝やタコの仲間)である。

だが、この時代、
軟体動物さんチームの旗手であるオウムガイが好戦はしたものの、
節足動物さんチームの方が圧倒的に有利であった。
大軍を率いて押し寄せる三葉虫どもの群れもさることながら、
無敵の大将軍アノマロカリスが出現したからである。
そのあまりの強さと、
同士討ちも何のそのという手のつけられない凶暴さは、
もはや味方であるはずの三葉虫ですら、
襲われる恐怖に身を潜めるほどであった。

そのころ軟体動物さんチームは、
攻めの節足動物さんチームに対抗するために守りを固めた。
オウムガイは背中にまっ直ぐの殻を背負い(直角石)、
巻き貝はクルリと巻いた殻で敵の攻撃を防いだ。
そして二枚貝にいたっては二枚の殻に閉じこもったきり、
出てこなくなってしまったのである。

これに目をつけたのが
棘皮動物さんチーム(ウニやヒトデの仲間)であった。
オルドビス紀に登場したヒトデは厳しい修行の末、
ついに二枚貝をこじあける必殺技を会得する。
かくして強靱な生命力と固い体を持ったヒトデは、
獲物にひっそりと忍びより、
サンゴなどの腔腸動物さんチームや、
二枚貝などの軟体動物さんチームを次々と闇討ちにしていった。

シルル紀になると時代遅れの鎧をまとった三葉虫やオウムガイは、
もはやその力も限界に来ていた。
だが、この混乱の機に乗じて一旗あげようともくろむチームがあった。
シャミセンガイ率いる、腕足動物さんチームである。
そしていつも追いやられていた腔腸動物さんチームや、
その他の中小チームもいっせいに名乗りを上げた。
時はまさに、群雄割拠の時代を迎えようとしていたのである。

だがそんな中、節足動物さんチームには、
新たな変化を遂げた新部隊が次々と現れていた。
固い装甲とたくさんの手足、攻撃を見切る眼や、
名刀を二本差しに備えた一騎当千の剣豪たち。
そしてついに、
節足動物さんチームの旗本であるサソリが、
陸上への一番乗りを果したのであった。

デボン紀に入り、各チームの力関係に異変が起きた。
それまで沈黙を保っていた脊椎動物さんチーム(魚や哺乳類の仲間)が、
ここにきて突然、強力な精鋭部隊「甲冑魚」を投入してきたのである。
浮き足立つ節足動物さんチームはなす術もないまま、
ただただ敗退していく自軍を見守るしかなかった。

一気に海の天下を取った甲冑魚の率いる脊椎動物さんチームは、
その勢いにのって両生類侍イクチオステガたちを先駆けに
陸上へも歩を進めた。
節足動物さんチームの最後の砦に、
いよいよ脊椎動物さんチームの進撃の手が迫っていたのである。

石炭紀の陸上では、
脊椎動物さんチームと節足動物さんチームが
一進一退の攻防を続けていた。
脊椎動物さんチームの激しい追い打ちが襲いかかる中、
8尺(約2メートル40センチ)を越える程の
巨大な荒武者アースロプレウラの存在は、
節足動物さんチームにとって陸上最後の希望であった。

臨機応変に姿を変える適応力の高さを武器に戦う節足動物さんチーム。
それに対し、
じっくりと、ひとつひとつの機能を強化していく脊椎動物さんチーム。
そして石炭紀がまもなく終わろうとするその時、
混沌の闇の中から一陣の風と共に現れたのが、
爬虫類侍ヒロノムスであった。
……だが荒武者アースロプレウラに敗れ去った。

二畳紀にさしかかり、水辺には両生類侍があふれ、
爬虫類侍も次々と新型が登場した。
その時である!
とつぜんナゾのチカラが働き、
足軽から殿(との)に至るまで、
全てのチームがことごとく呑み込まれてしまったのだ!
歴戦の武者たちに突如おとずれた無念の最後であった。
かくして天下統一は果されることなく、
古生代はその幕を閉じたのである。




【中生代の章】


二畳紀に起きた大異変を生き延びたのは、
わずかな弱兵ばかりであった。
中生代が幕を開け三畳紀が訪れてもなお、
見渡すばかりの、むなしい大地。
これが世に言う「夏草や、兵(つわもの)どもが夢の跡(芭蕉)」である。

その頃、かろうじて生き延びた脊椎動物さんチームの両生類侍から、
なんと突然、カエルが進化してきた。
だがカエルは争いを好まず、波風を起こさずに暮らすことを選んだ。
しかし爬虫類侍は違っていた。
天下統一の野望を、まだあきらめてはいなかったのである。

ジュラ紀、どこからともなく彼らは現れた。
脊椎動物さんチームの新勢力、大恐竜軍である。
空からは翼竜が、海では海竜が襲いかかる
そのあまりにも強大な力の前に、
殿を失った他のチームの者たちは、
もはや逃げまどうしかなかった。
かくして地球は爬虫類の星となった。
全てのチームがカンブリア紀より夢見た天下統一。
それは大異変からいち早く立ち直った
脊椎動物さんチームによって、
ついに成し遂げられたのである!!

白亜紀になり、戦国武神ティラノサウルスが出現した。
その荒ぶる力の前に、他のチームは言うに及ばず、
大恐竜軍の武士達までが、
逃げまどわなければならなくなってしまった。
もはや地球はティラノサウルスのものになってしまったのである。
しかし天下は長くは続かなかった。
またしてもいきなり訪れたナゾのチカラにより、
数々の名将たちが消えていったのだ!
こうして大恐竜家は崩壊し、
中生代はあえなくその幕を閉じたのであった。




【新生代の章】


第三紀、厳しい大地に生き残ったわずかな兵たち。

陸には、
脊椎動物さんチームの「哺乳動物」や
節足動物さんチームの「昆虫」、

空には、
脊椎動物さんチームの「鳥」や
節足動物さんチームの「昆虫」、

海には、
脊椎動物さんチームの「魚」や
節足動物さんチームの「エビ」や
軟体動物さんチームの「タコ」……、

各チームの中で高度に進化していった者たち。
彼らが選んだのは、それぞれ棲み分けをしながら
更なる進化を極めようとする道であった。

第四紀になり訪れた氷河期。
長く厳しい、極寒の時代。
だが今度はたくさんの者たちが生き残ることができた。
それぞれがいろいろな形で助け合い、調和し、
見えない絆で固く結ばれながら……。

全てのチームがたどりついた、ひとつの答え、
それが、ひとつの大きな生命体としての、「地球」。
全ての動物たちは、もう、
天下統一よりも大事なものを、見つけてしまったのである。

\(^▽^)/\(^▽^)/\(^▽^)/\(^▽^)/\(^▽^)/




おしまい。