不思議動物のエッセイ

7.巨大生物、他

珍しい動物のお話

46億年もの地球の歴史の中で誕生してきた驚くべき特技を持つ不思議な動物たち。そんなひとくせもふたくせもある珍しい動物たちの驚異の能力を軽快なタッチでご紹介するエッセイです。専門的な難しい話は抜きにして、子どもから大人まで楽しめる内容となっています。

【音速を超えて】

空を飛ぶ生き物というとどんな動物を想像するでしょうか。
私達の身近でも 多くの鳥達が空を生活の場としています。
空を飛ぶ代表的な生物である鳥は飛行能力を得るために
体の構造を大胆に再構築しながら進化してきました。
頭を軽くするために噛むことをやめ、
歯が必要なくなり、それを支えていた顎の骨、そして筋肉が小さくなりました。
なくても生きられると思うものは片っ端から省略していき
直腸もなくし、足も限界まで簡素化されました。
そしてエンジンともいうべき心臓と翼を動かす筋肉、
指令塔である脳を強化してついに空に飛び立つ力を得たのです。
ちなみに始祖鳥は見た目は鳥のようですが
鳥のように空を自在に飛びまわる事はできず
進化の過程で鳥になりそこねてしまったようで
今日の鳥たちの先祖がどんな生物だったかは意外に難問かもしれません。
現在は鳥類は恐竜から直接進化したという説が盛り上がっているそうです。
鳥の最大の身体的特徴は羽毛ですが
もともとは飛ぶためのものではなかったとか。
白亜紀には羽毛をもった恐竜達がはしりまわっていたという話もあります。
いろいろな手段で自由に空を飛ぼうとした脊椎動物たち、
ヒヨケザルやムササビ、トビヘビやトビトカゲ、パラシュートヤモリ、トビガエル、トビウオ・・・
そんななかでたまたま羽毛をもっていた彼らが大空へのチケットを手にしたのかもしれません。
多くの難関をくぐりぬけ、空を制した鳥たちの飛行能力は素晴らしく
その移動速度はハヤブサだと時速300キロ近く、急降下するときには時速400キロにまでなるそうで
生物としてもっとも高速に空間を移動する事ができるようになったかのようでした。
ところが面白い話があります。
昆虫にも飛行能力の優れた種がたくさんいますが蚊もかなりの飛行能力の持ち主だとか。
アメリカで有名なある雑誌に載っていた話によると
マッハ2で飛ぶNASAのジェット機に追いついた蚊がいるそうです。

■補足■
・ある雑誌とは「Field & Stream」誌です。読んだのはだいぶ前なので号数は忘れてしまいました。

【そびえる巨体】

地球上に存在する生き物の大きさは実に様々です。
一ミリの5万分の一しかないウィルスから
果てはどこまで大きくなっていくのでしょうか。
現在 地上でもっとも巨大な動物であるアフリカゾウは
高さは肩まで地上から4メートル、体重は最大で12トンにもなるとか。
帝王マンモスより巨大ということになります。
肉食獣の中ではミナミゾウアザラシが体重は4トン、
地上にあがって頭をもたげると4メートルを超えるということです。
高さではキリンが最大で5.5メートルにもなり、重さは2トン位です。
地球上にはかつてもっと巨大な動物がいました。
絶滅してしまったオオナマケモノは数トンの巨体ながら
2本の足で立ち上がり6メートルをゆうに超える高さの
木の若芽を食べていたそうです。
古代サイ インドリコテリウムは頭だけで1.2メートル
肩までの高さが5メートル、体長は10メートルにも達した巨大哺乳類です。
今も生きていたら長い首を伸ばしてキリンを見下ろしていたかもしれません。
恐竜は古代の巨大生物として代表的な存在ですが
骨の一部しか見つかっていないものも多く推定にも幅がでてきてしまいます。
最近 話題になった巨大恐竜サウロポセイドンは
高さでは今までで最大だとかで18メートルもあったそうです。
深海は巨大生物の宝庫です。
17メートルのダイオウイカや
触手を40メートルも伸ばすユウレイクラゲなど
深海の無脊椎動物たちは次々に巨大に進化していきました。
現在までに多くの巨大生物が滅びていきましたが
環境の変化の少ない深海だからこそ こうして生き延びてこられたのかもしれません。
私たちの世界からは遠く離れた暗い海の底で
今も、そしてきっと人類が滅びたそのあともずっと
静かに変わることなくいつまでも生き続けていくことでしょう。

最大33メートル、体重177トンにも達し
確実に確認されている生物としては地球史上最大の生物であるシロナガスクジラも
絶滅の危機にあります。
地球が生んだ偉大な生命が消えようとしているのは寂しいものです。

■補足■
・マンモスの中には現存のアフリカゾウの倍以上もある大きな種がいたという説もあります。
・地球史上最大の陸生哺乳類インドリコテリウムには他のサイのような角はなかったそうです。
・同じく地球史上最大と言われる巨大サイにはバルキテリウムやパラケラテリウムがいますが、
バルキテリウムはパラケラテリウムに含められ、
また、インドリコテリウムより巨大と言われていたバルキテリウムの化石は
実際にはインドリコテリウムであったということです。
これにより、現在ではインドリコテリウムが史上最大の陸生哺乳類であるとされています。
近年、状態の良い化石の発見により、若干大きさが小さめに見直される傾向にあり、
肩までの高さ4.5メートル、全長7.5メートルとなったそうですが、
生物は個体によって大きさには差があるので、
実際には更に大きく成長した個体が存在していた可能性もあります。
・シロナガスクジラについてはこちら

【そっくりさん】

フクロモモンガというモモンガによく似た動物がいます。
空を飛ぶための皮膜があり目も大きく小さな手で木の実をにぎりしめて
一生懸命たべている様子は本当にモモンガによく似ています。
大きさはモモンガと変わりませんが より滑空能力に優れ
モモンガの30~40メートルの飛行距離に対し
通常で40~50メートルほど飛ぶそうです。
しかしながらフクロモモンガはげっし目ではなく
モモンガとはかけ離れた有袋目、つまりコアラやカンガルーに近い動物です。
どちらかが真似をしたというわけではないでしょうが
全く別の進化の道筋を歩みながらこんなに似ているのも不思議なものです。
生物は遺伝的に離れていても同じ環境や、
生きるために効率の良い進化の方向にめぐりあった種は
同じような姿や機能をもつようになるという話があります。
例えば私達の目はとてもよくできていて
ピントや光の量を調節し明るさや、物体の輪郭、色、動き、距離を認識する事ができます。
その構造はいまあるカメラに通じるものがあります。
そしてその構造は実はタコの目にも採用されているのです。
人は脊椎動物、タコは軟体動物と解剖学的にも分子生物学的にもかけはなれ
目を構成する物質も全く異なりながら その仕組みはともにとても良く似ているのです。
軟体動物の中で体の機能を高度に進化させてきたタコの選んだ目の設計図は
人が選択したものと同じだったようです。
有袋類にはまだまだ多くのいろいろな動物に似ているものがいます。
フクロオオカミ、フクロモグラ、フクロムササビ、フクロシマリス・・・。
ちなみにモモンガによく似たフクロモモンガにも
さらにフクロモモンガダマシというよく似た動物がいるそうです。

■補足■
・タコの眼は色は識別できないと言われています。
・フクロオオカミは国際保護動物ですが、
1961年以降の目撃例がなく、絶滅したとも言われています。